申入書

総務大臣    高市早苗 殿

厚生労働大臣 塩崎 恭久殿

 2017年3月1日

障害年金法研究

代表  橋 本 宏 子

申入れの趣旨

 

1 障害年金の審査請求手続きの口頭意見陳述期日において処分庁は出席すること。

2 口頭意見陳述の記録は録音し、反訳記録するなど合理的な運用をされたい。

3 支給決定書に審査請求二重前置の誤った教示がないよう徹底されたい。

 

申入れの理由

はじめに 

 当会は、障害年金を必要とする人に確実に行き届くようにするため、障害年金問題に関わってきた(あるいはこれから関わろうと志を持つ)社会保険労務士、社会福祉士・精神保健福祉士、弁護士等の専門家、研究者等が協力しながら具体的事案を通じて研鑽を重ね、障害年金制度をよりよく改善するために活動を行うために2015年10月に結成された団体です。

 

1 趣旨1について

「行政不服審査法」(第31条1項)は申立人に口頭意見陳述の機会を保障しています。そして2016年4月1日施行の改正同法の同条第5項は、申立人に処分庁に対する「質問権」を付与しました。同時に施行された改正「社会保険審査官及び社会保険審査会法」(第9条の3第2項)は、「口頭意見陳述は、審査官が…保険者…を招集してさせるものとする。」と規定します。意見陳述期日は審査官から処分庁(保険者)に対して招集が通知されています。

しかし、同法施行以降、当会会員が出席した意見陳述での処分庁の出欠状況は次のとおりです。 

関東信越厚生局7回、近畿厚生局1回すべて欠席している。

 

2 趣旨2について

 関東信越厚生局における口頭意見陳述では複数の審査官事務局員が書記に配置されながら、30分等以上の申立人の陳述が数行(2~3行)しか記録されない等不合理な運用実態を会員が経験しています。意見陳述は全て録音し、反訳文を記録に綴る等合理的運用に改善されるべきです。近畿厚生局ではそのような不合理はなく、陳述要旨を決定書に盛り込み、録音反訳文を記録に綴る運用とのことですので、全国での徹底を国は指導すべきです。

 

 趣旨3について

 (不)支給決定書の教示部分に「この決定の取消の訴えは、再審査請求の裁決を経た後でないと提起できません。」と審査請求二重前置の誤った教示のある事案が少なからず散見されます。

 これは裁判を受ける権利の妨害であり、改正法が「二重前置主義を撤廃」した趣旨を没却します。

 このような過ちがないよう速やかに徹底されるべきです。      

以上

申入れについて共同通信より配信された記事

「年金不服申し立て、骨抜き 厚労省、審理に出席ゼロ」

2017年03月01日

 年金など社会保険に関する決定に不服申し立てができる制度で、申立人が審理の場で意見陳述する際は国側も呼ぶことが昨年4月の法改正で定められたのに、厚生労働省が人手不足を理由に地方での審理に全く出席していないことが1日、分かった。

 社会保険労務士や弁護士らでつくる団体からの改善要請を受け、明らかにした。申立人が国に質問できるようにするという法改正の目的を骨抜きにしている形で、厚労省は不適切だったことを認めて「4月からはテレビ電話などで出席するようにしたい」としている。

 審査請求という制度で、最初は厚労省の出先機関である地方厚生局の社会保険審査官に申し立て、その後、厚労省本省の社会保険審査会に再審査請求ができる二審制の仕組み。

 昨年の法改正で、意見陳述の際には国側を招集し、申立人が質問できる権利も定められた。しかし、今年2月までに厚生局で200件以上あった年金関係の意見陳述を厚労省はすべて欠席。担当者は「人員的に出席することが難しく、質問には文書で回答してきた」と釈明している。

 審査請求は障害年金関係が大半を占める。厚労省に改善を要請した障害年金法研究会の藤岡毅(ふじおか・つよし)弁護士は「障害年金の支給判定はずさんな面があり、質問したいという当事者の思いがないがしろにされている」と批判している。